故人に尽くした「寄与分」の評価方法について
相続人のうち、生前の故人に対して、生活面や経済面から特別な貢献があった場合、その人は法定相続分よりも多く財産を受け継いで然るべきとも考えられます。
しかし、何も主張しなければ、財産は法定相続割合に基づいて分配されることになり、特別な貢献を行った人に対する特別な利益は得られません。
そこで今回は、故人への特別な貢献に対して主張できる「寄与分」の範囲や計算方法について解説します。
寄与分が認められる人とは
相続人の中に、生前の故人に対してよく尽くした人がいた場合、その人に法定相続分とは別に「寄与分」が認められる場合があります。
寄与分とは、他の相続人に比べて特に故人に貢献していた事実があった場合、法定相続割合に基づく相続財産よりも多めに受け取ることで公平を保つことができる、という考え方がベースとなっているのです。
さらには、相続法の改正によって、改正法施行後は、相続人以外の人であっても、特別の寄与をした親族であれば、相続人に対し、特別寄与料を請求することが認められることになりました(民1050条)。
特別な貢献があったとみなされるケース
寄与分と認められるためには、相続人が行った行為が特に献身的であった場合や、その行為によって故人の財産減少を防いだり、財産増加に貢献したといった事実が必要です。
具体的には、以下のようなケースが寄与行為として該当します。
故人の事業に対する貢献があった
生前の故人が事業を営んでいた場合、無償あるいは非常に少ない給与で仕事を手伝ってきたような場合が該当します。
その相続人が対価の多少に関わらず故人を手伝えば、その分、事業としての支出を防ぐことに繋がりますし、結果として業績が上がればなお貢献度が高いと見なされる可能性があります。
ですが、単に親の会社で働いていたといった事情だけでは、特別な貢献とは認められない可能性が高いでしょう。
故人に対して金銭を提供した
故人の財産購入あるいは借金返済において、相続人が自らの貯金や収入から金銭的な提供を行ったりした場合も該当します。
故人を扶養した
夫婦や兄弟姉妹、直系の血縁者には相互扶養義務がありますが、一般的に考え得る基準を超えた扶養を行った場合に認められます。
例えば、子が複数いるにも関わらず、特定の子だけが親の扶養を引き受けていた場合、これにより故人は自らの財産を減らすリスクを回避できたことになるため認められる可能性があるのです。
特に、故人から生活費を受け取らず無償で扶養した場合は、寄与分と認められる可能性が高くなります。
故人の看護や介護に尽くしてきた
生前の故人が長く病床に伏せる等して、長期的な療養または介護が必要になった時、その看護や介護に尽くした相続人の行為が認められる傾向にあります。
もし相続人が故人の世話をしなかった場合、有償の付き添い看護を必要としていたかもしれません。
しかし、当該相続人が尽力したおかげで、看護や介護にまつわる支出を防ぎ、故人の財産維持または減少予防に貢献したことになるのです。
寄与分の評価と計算
寄与行為を経済的価値として表す際、その在り方によって評価方法や計算方法は変わります。
故人の事業に対する貢献があった場合の評価
故人と当該相続人が一緒に暮らしていた場合、その生活費を控除する必要がありますが、寄与分の基本的評価は本来の給与額を考慮します。
したがって、計算式としては以下の通りとなります。
- 当該相続人が本来受け取るべき給与年額×(1-生活費控除)×貢献した年数
故人に対して金銭を提供した場合の評価
基本的には提供した金額そのものが考慮されますが、例えば故人が不動産を購入するために出資したような場合は、若干の調整が入ります。
実際には、購入にかかった全費用のうち出資分の割合について寄与分として評価されます。
- 故人死亡時点での不動産評価額×(寄与行為のあった相続人の出資額/当時の不動産購入額)
故人を扶養した場合の評価
故人を引き取って扶養したか、金銭的な扶養を行ったかにより評価は変わります。
故人を引き取って扶養した場合
- (扶養にまつわる実際の費用か生活保護費から算出した金額)×扶養期間×(1-当該相続人の法定相続割合)
金銭的な扶養を行った場合
- 扶養のために出費した金額×扶養期間×(1-当該相続人の法定相続割合)
故人の看護や介護に尽くしてきた場合の評価
相続人自ら付き添いを行ったか、付添人費用を負担したかによって評価は変わります。
自ら付き添って看護または介護した場合
- 付添人の日当×看護または介護を行った日数×裁量的割合
付添人費用を負担した場合
実際に負担した金額がそのまま認められます。
以上のようにして評価額を出したら、全相続財産から寄与分を控除し、残った財産を法定相続割合に基づいて分割し、寄与行為のあった相続人は、寄与分に加えて法定相続分も受け取れることになります。
寄与分の主張は当事務所の弁護士までご相談ください
寄与行為は本人の善意に基づくものであることから、確たる証拠が揃っているケースは決して多くないと言えます。
したがって、当事務所としては、できるだけ早くから日記やメールなどによる介護療養記録を残すことをお勧めしています。
故人に対して特別な貢献があったことを周囲に納得させなければなりませんので、目に見える形で証拠を残すことは非常に大切なのです。
弁護士に依頼すれば、そもそも当該相続人が行ってきたことが、本当に法律的な寄与行為に該当するのかも見極めることができるでしょう。
また、事実関係の裏付けに関しても、自力で行うよりも専門家である弁護士の助言を受けながら準備を進めた方が状況を混乱させずに済みます。
ぜひ、最初の時点から当事務所弁護士までご相談頂き、現時点からできる最良の策を講じていくことをおすすめします。